ビジネスとカジュアルの違いとは?ビズポロの袖に注目してみます。

2005年に当時の環境大臣で現東京都知事の小池百合子さんがクールビズという言葉を世の中に推し進めてから、10年以上経っています。ノーネクタイに始まり、ジャケットを脱ぎ、ニット素材のシャツにまでカテゴリーが大きくなってきました。当然仕事の業種やそれぞれ会社の考え方によって状況が大きく異ると思いますので、あくまで基本がスポーツカジュアルを根底に置いたニットウェアを製造している会社の意見としてお話ししたいと思います。

ビズポロと呼ばれているニットシャツやポロシャツはどのようにビジネスシーンに対応していけばいいのでしょうか。無地の生地であることは大前提だとして、私はサイズ感や袖の形状が重要な要素なのだと思います。よくファッションは我慢だという言葉を聞いたことがおられるかもしれません。そしてビジネスシーンのように姿勢を正す場面も、我慢しなければいけないことは多いのだと思います。ソーシャルな場面ではなるべく相手に悪い印象を与えないこと、この人はキッチリ仕事をしてくれそうだという印象を与えること。その大前提をくずしてしまうと、クールビズはただのカジュアルダウンになってしまいます。ファッション=個人の自由ではありません。自由に振る舞える休日と、人から求められるソーシャルは全くの別物と考えるべきなのだと思います。見られる事を意識しなければならないビジネスシーンとは、やはり我慢も必要不可欠の要素といえるのではないでしょうか。


まず原点に戻ってビジネスシーンで必須であったジャケットを見てみましょう。


このジャケットは私が前職の某有名スーツメーカーに在籍していた時に買ったものです。ジャケットの設計思想は、人が真っ直ぐに立った状態で、自然に腕を下ろした状態で最も綺麗に見えるように作られています。今回は袖に焦点を当ててお話ししていきます。袖は体の真横から少し前側に付き、袖は腕を自然に下ろした時のように軽く前にカーブを描いています。肩周りの動きを損ねないように、アームホールの肩付近を中心にイセ込みを入れて特に前側への動きに対応できるようにされています。
ただ設計には自由に腕を大きく上に上げるような動きは想定されていません。あくまでソーシャルなシーンに必要な動きとして、過去には乗馬で手綱を握れる程度、現在ではデスクでパソコンを打てる程度、電車で吊革を持てる程度、車を運転できる程度に腕が上がる。それがジャケットに必要な動きの範囲として、きっちり機能が備わっています。ですが、あくまで「気を付け」の姿勢が最も綺麗に見えることこそがジャケットの一番重要な要素なのです。動き易さは二の次として、やはりビジネスシーンでは間違いなく着る人を彩る主役アイテムと言えるでしょう。
語り尽くせない部分はまだまだたくさんあります。ジャケットには電気製品のように分かりやすい機能ではないですが、見えにくい部分に色々な計算と技術が詰まっていると改めて感じました。


話をビズポロに戻したいと思います。

  

この2枚の写真でよりビジネスに向いているというのはどちらでしょうか。
2枚は明らかに腕と袖の関係としてのサイズ感に違いがあります。左の袖は肩から下向き鋭角に袖が付いているように見えます。右側の写真は肩から鈍角に、より横向きに袖が付いているように見えないでしょうか。
「そんなに違う?」とおっしゃられる方もいるかもしれません。右のシャツの形がビジネスで全く対応出来ないかと言われれば、そうではないとも思います。ですが右の袖のようにピンっと横に張り出してしまった袖というのはサイス感が合わず、おじさん的なシルエットに見えるものなのです。夏は特に半袖のカッターシャツで袖が横にピンっと張り出したおじさんスタイルをよく見かけませんか?先程のジャケットの時にお話したように、「気を付け」の姿勢で綺麗に見えるのは袖が腕に沿っている左のシャツだということです。逆に袖が上がりやすく、動きやすい袖はスポーツ用に向いているとも言えます。

パターンにしてみると下の図のように、袖山が高く袖が下向きに付いているほど腕を下ろした時に綺麗な袖です。袖山が低く横向きに袖が付いていると、腕を下ろした時にあまり綺麗ではないですが、腕が上げやすくスポーツなどには向いているということです。


右のシャツの袖にもメリットはあります。日本の気候は皆さんが日々感じているように、非常に湿度が高いですよね。快適性を求めた時には右のシャツのほうに軍配が上がります。袖が横向きに付き、腕が上がりやすく、袖口を広く取って風通しも良い。日本では快適性を求めると、サイズ感が合わずにおじさんのスタイルへと移行します。袖に限らず、大きくなったお腹周りのサイズに服を合わせてしまい、肩や袖がダブダブな服を着ているのもおじさん。大きくなったお尻のサイズに合わせて、膝も裾もダブダブなズボンを履いているのもおじさん。
快適さに負けて、自分のサイズ感を大きく見積もってしまうと、ビシッとしたビジネスシーンに合っていない服装になってしまうのかもしれません。
どちらをセレクトするも自由ですが、まずは自分の体に合ったサイズを客観的に理解することが大事だと思います。誰かに俯瞰的に見てもらったり、意見を聞くのも良いと思います。そして時には我慢も取り入れて、シーンに合った服を選ぶということがオシャレに繋がるのではないでしょうか。ビズポロを選ぶ際に、少し参考になればいいと思います。